monster

未知の怪物

１９９６，６，８

　その日まで、決まって夕方に、ラインを切っていく怪物がいた。何回続いたのだろう、３・４回はあったと思う。

　この日も、きっと来るだろうと確信していた。夕方４時から、今までの万能仕掛けから、セイゴばりの１２号へチェンジし、イワムシをつけ、怪物を待った。しかし、いっこうに来ない。６時を過ぎ、今日は来ないと、仕掛けを流線ばりに戻し、イソメをつけてぶっ込んだ。

　なんとこれに、いつもの怪物が来たのだ。今までと同じく、置き竿を強烈に動かすアタリ、強烈な引き。岩礁帯なので下手をすると、すぐバラシてしまう。今回は、ドラッグをゆるめていたので、流線ばりでも、なんとかねばって寄せてきた。いいぞ・・・と思ったとたん、いきなり最後の抵抗がきた。これには、やられてしまった。またしてもバラシ。ハリス切れだ。

　体の震えを感じた。悔しさが頭の中を駆けめぐり、何もできない。

　これだけでは、ドラマは終わらなかった。しばらくして隣にいた、女性黒鯛師に磯竿を半円にしならせる大物が来た。かなり抵抗している。それでもかなりの時間を費やしてあげたのは、５０ｃｍはあろうかという黒鯛だ。ちょっと見せてもらおうと思ったとき、その女性は、誇らしげに大物の収まったタモをかかえて走っていってしまった。

　次の釣行から、怪物のアタリは、パタリと止まった。

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